―親ができるフォローと、育てたい“変わらない力”―
「今ある仕事の半分は、子どもたちが大人になる頃にはなくなっているかもしれない」
そんな言葉を聞くと、親としては不安になるかもしれません。
けれど、未来が不確かだからこそ、子どもたちには「変化に対応できる力」や「自分の軸を持って生きる力」が必要になります。
そしてそれは、親子の対話や日常の関わりの中で、少しずつ育てていくことができるのです。
この先、どんな仕事が生まれ、どんな仕事が消えていくのかは、誰にも正確には予測できません。
けれど、「どんな未来でも生きていける力」は、今からでも育てることができます。
この記事では、未来の不確実性を前向きに受け止めながら、子どもが自分らしいキャリアを描いていくために、親ができるフォローや関わり方を、丁寧に考えていきます。
「職業」ではなく「力」に目を向ける
これからの時代、子どもたちが出会う仕事の多くは、今の私たちが知らないものかもしれません。
AIやロボット、デジタル技術の進化によって、仕事の内容や働き方は大きく変わっていきます。
だからこそ、「何になりたいか」よりも、「どんな力を育てたいか」「どんなふうに生きたいか」に目を向けることが大切です。
たとえば、以下のような“変わらない力”は、どんな時代でも価値を持ち続けます。
- 自分の興味や感情に気づく「自己理解力」
- 他者と協力し、対話する「コミュニケーション力」
- 問題を見つけ、工夫して解決する「創造力・思考力」
- 変化を受け入れ、学び続ける「柔軟性と好奇心」
- 自分で選び、行動する「意思決定力と行動力」
これらの力は、学校の成績やテストでは測りにくいものですが、日々の暮らしの中で育てていくことができます。
親が「どんな職業に就くか」ではなく、「どんな力を育てているか」に注目することで、子ども自身も「変化に強い自分」を意識できるようになります。
たとえば、子どもが友達とのトラブルを自分なりに解決しようとしていたら、それは「対話力」や「問題解決力」が育っている証です。
何かに夢中になって取り組んでいる姿は、「集中力」や「探究心」の表れです。
親がそうした姿を見つけて、「今のあなたの力、すごいね」と言葉にして伝えることで、子どもは自分の内側にある力を信じられるようになります。
「正解のない問い」に慣れる経験を
未来の社会では、「これが正解」という答えがない問いに向き合う場面が増えていくでしょう。
技術や価値観が急速に変化する中で、過去の成功例がそのまま通用しないことも多くなります。
だからこそ、子ども時代から「自分で考え、自分なりの答えを出す」経験を重ねることが大切です。
たとえば、日常の中でこんな問いかけをしてみることができます。
- 「どうしてそう思ったの?」
- 「他のやり方もあるかな?」
- 「もし〇〇だったら、どうする?」
- 「どっちを選びたい?理由はある?」
こうした問いは、子どもにとって「考える練習」になります。
そして、親が「答えを教える人」ではなく、「一緒に考える人」になることで、子どもは安心して自分の考えを表現できるようになります。
また、正解のない問いに向き合う力は、創造性や柔軟性を育てる土台にもなります。
「どうして?」と聞かれたときに、自分の言葉で答えようとする経験は、思考力や表現力を育てる貴重な時間です。
親が「それ、面白い考え方だね」「そんなふうに考えたんだ」と受け止めることで、子どもは「自分の考えには価値がある」と感じるようになります。
「変化」をポジティブに語る
社会が変わること、仕事が変わることを「怖いこと」「不安なこと」として語るのではなく、「面白いこと」「可能性が広がること」として伝える姿勢も大切です。
子どもは、大人の言葉や表情から「未来は明るいか、暗いか」を感じ取ります。
だからこそ、親が変化を前向きに語ることで、子どもは「未来は自分でつくっていいものなんだ」と感じるようになります。
たとえば、こんなふうに話してみるのはいかがでしょうか。
- 「昔は電話にコードがついてたんだよ。今はスマホで何でもできるよね」
- 「お母さんが子どもの頃にはなかった仕事が、今はたくさんあるんだよ」
- 「これからは、君が新しい仕事をつくるかもしれないね」
こうした会話は、子どもにとって「変化はチャンス」という感覚を育てるきっかけになります。
また、親自身が「変化を楽しむ姿」を見せることも、子どもにとって大きな学びになります。
新しいことに挑戦する姿、失敗しても笑っている姿、工夫して乗り越える姿。
それらはすべて、子どもが「変化に向き合う力」を育てるための、最高の教材になります。
「好き」や「得意」を育てる日常の関わり
未来の職業がどう変わっても、「自分の好きなこと」「得意なこと」を知っている人は、どんな時代でも自分の道を見つけやすくなります。
それは、職業の名前が変わっても、「自分の軸」があれば、柔軟に進路を選び直すことができるからです。
親ができることは、子どもの「好き」や「得意」に気づき、それを言葉にしてあげること。
「絵を描くのが好きなんだね」「人の話をよく聞いてるね」「工夫するのが得意だね」
そんな一言が、子どもにとっては「自分の軸」を育てる大切な種になります。
また、「やってみたい」と思ったことを応援する姿勢も大切です。
失敗しても、「やってみたことがすごいね」「次はどうしたい?」と声をかけることで、子どもは「挑戦していいんだ」と感じられるようになります。
さらに、親が「子どもの興味に寄り添う時間」を持つことで、子どもは「自分の感覚を信じていいんだ」と思えるようになります。
それは、未来のキャリアを描くうえで、何より大切な土台になります。
「キャリア=生き方」として語る
キャリアとは、単に「職業」や「収入」ではなく、「自分らしく生きる道」のことです。
それは、肩書きや会社名ではなく、「どんな価値観を持ち、どんな人と関わり、どんな毎日を送りたいか」という、生き方そのものに深く関わっています。
だからこそ、親子で「どんなふうに生きたいか」「どんな人でありたいか」を語り合う時間が、とても大切になります。
「どんな仕事に就くか」ではなく、「どんな人生を歩みたいか」という視点を持つことで、子どもは職業選択を“自分の生き方の延長”として捉えるようになります。
たとえば、こんな会話をしてみるのはいかがでしょうか。
- 「どんな毎日が楽しいと思う?」
- 「どんな人と一緒にいたい?」
- 「どんなことを大切にして生きたい?」
- 「誰かの役に立つとしたら、どんな場面がいいと思う?」
こうした問いは、子どもにとって「自分の価値観」を見つめるきっかけになります。
そして、親が自分の人生についても正直に語ることで、子どもは「キャリアは自分でつくっていくものなんだ」と感じるようになります。
たとえば、「お母さんは、昔は違う仕事をしていたけど、今は人と話す仕事が好きになったんだよ」と話すことで、子どもは「人生は変わっていい」「選び直していい」という感覚を持つようになります。
また、「お父さんは、仕事でうまくいかないこともあるけど、仲間と協力して乗り越えるのが好きなんだ」と語ることで、「仕事は人との関係の中で育つもの」という視点が育ちます。
キャリアを“生き方”として語ることで、子どもは「自分の人生をどうつくっていきたいか」を考えるようになります。
それは、未来の職業がどんなに変わっても、揺るがない自分の軸となるものです。
未来は“わからない”からこそ、育てられる力がある
未来の社会は、きっと今よりもっと複雑で、予測が難しいものになるでしょう。
AIやロボット、グローバル化、気候変動、価値観の多様化…。
子どもたちが大人になる頃には、今の常識が通用しない場面も増えているかもしれません。
けれど、「わからない未来」に備えるために必要なのは、「すべてを知ること」ではありません。
必要なのは、「変化に向き合う力」「自分を信じる力」「人とつながる力」を育てることです。
そしてそれは、親子のあたたかな関係の中で、日々の対話や体験を通じて、少しずつ育まれていくものです。
親ができるのは、子どもがその力を育てていくための土壌を整えること。
「あなたの感じ方には意味があるよ」
「失敗しても、それは次へのヒントになるよ」
「どんな未来でも、あなたらしく生きていけるよ」
そんな言葉を、日々の中でそっと伝えていくことが、子どもにとっての最大の支えになります。
未来は、まだ誰にも見えません。
だからこそ、子どもたちは自由に描いていいのです。
その自由な未来を、親子で一緒に育てていきましょう。
不確かな時代だからこそ、親のまなざしと言葉が、子どものキャリアの灯火になるのです。

