情報モラルは“見えない世界”のコンパス
「情報モラル」という言葉、聞いたことはあるけれど、実際にどう教えればいいのか、何を伝えればいいのか——そう感じる親御さんも多いのではないでしょうか。
GIGAスクール構想のもと、子どもたちは日常的にタブレットやインターネットを使うようになりました。調べ学習、プレゼン作成、プログラミング、共同編集など、学びの幅は広がっています。
でもその一方で、ネットの世界には「見えない危険」も潜んでいます。SNSでの誹謗中傷や炎上、個人情報の流出やなりすまし、フェイクニュースや詐欺的な情報、ゲーム内チャットでのトラブルなど、親が気づかないところで起きることも多く、子ども自身も「何が危険なのか」「どうすればいいのか」がわからないまま使っていることがあります。
だからこそ、家庭での情報モラル教育が重要です。それは、単なる“ルールづくり”ではなく、“親子で価値観を共有する対話”であり、“日常の中で育てる力”なのです。
情報モラルとは何か?〜正しく、安全に、思いやりを持って情報と向き合う力〜
情報モラルとは、インターネットやSNSなどの情報社会の中で、他人を思いやりながら、正しく安全に行動するための考え方や態度のことです。
たとえば、ネットで知り合った人に個人情報を教えない、誰かを傷つけるような言葉を書かない、著作権を守る(人の作品を勝手に使わない)、フェイクニュースや詐欺に気づく力を持つ、自分の言動が誰かにどう影響するかを考える——これらは、単なる知識ではなく、日々の行動や判断に関わる“生きた力”です。
そして、学校だけでなく、家庭でも育てることができます。むしろ、家庭こそが「価値観の土台」をつくる場所。親子の会話や体験を通じて、情報モラルは自然と育っていくのです。
子どもへの伝え方:怖がらせず、考えさせる
情報モラルを伝えるとき、親がやりがちなのが「危ないから使っちゃダメ」「変な人がいるから気をつけて」という“警告型”の伝え方です。でも、これは逆効果になることもあります。子どもは「怒られるから隠そう」「親には言わないでおこう」と思ってしまうことがあるからです。
そこでおすすめなのが、“問いかけ型”の説明です。
たとえば、「もし知らない人からメッセージが来たら、どうする?」「誰かが傷つくようなコメントを見たら、どう感じる?」「この動画、ほんとに信じていいと思う?」「自分がされたら嫌なことって、ネットでも同じだよね」など、問いかけを通じて、子ども自身が「どうすればいいか」を考えるようになります。
親は“答えを教える人”ではなく、“一緒に考える人”になることが大切です。さらに、親自身も「わからないことを学ぶ姿勢」を見せることで、子どもは安心して相談できるようになります。
実践できる家庭での情報モラル教育〜日常の中で育てる、7つのアクション〜
- ネットの使い方を“見える化”する
どんなアプリを使っているか、親子で共有する。スクリーンタイムや履歴を一緒に見て、使い方を振り返る。「今日は何を調べた?」「どんな動画見た?」と聞いてみる。見張るのではなく、共有することで、安心感と信頼が育ちます。 - 家庭のルールを“親子で”つくる
「夜9時以降は使わない」「個室では使わない」などのルールを話し合って決める。ルールの理由を説明する(例:「夜は眠りの質が下がるから」)。定期的に見直す(学年が上がったら更新する)。ルールは守らせるものではなく、育てるものです。 - トラブル時の対応を“事前に”話し合う
「困ったことがあったら、すぐに相談してね」と伝えておく。「変なメッセージが来たら、スクショを撮って見せてね」「誰かを傷つけるような言葉を見たら、どうする?」とシミュレーションしておく。もしもの時に、子どもが安心して行動できるようになります。 - 著作権やマナーを“体験で”学ぶ
YouTubeやSNSで「これは誰が作ったもの?」と考える習慣をつける。自分で写真や動画を作ってみて、「勝手に使われたらどう感じる?」と話す。コメントを書くときは「自分が言われたらどう思うか」を考える。人の気持ちを考える力が、情報モラルの土台になります。 - フェイクニュースを“見抜く力”を育てる
「このニュース、本当かな?」と一緒に検証してみる。複数の情報源を比べる習慣をつける。「信じる前に、調べてみよう」という姿勢を育てる。情報を鵜呑みにしない力が、未来のリテラシーになります。 - SNSとの距離感を“親子で”考える
「SNSって、どんなところが楽しい?どんなところが怖い?」と話す。「いいねが少ないと、どう感じる?」など感情面にも触れる。「誰かの投稿を見て、比べたくなったことある?」と自己肯定感についても対話する。SNSは使い方だけでなく、心の使い方も大切です。 - 親も“育つ姿勢”を見せる
「お母さんも、ネットのこと勉強してみようかな」と言ってみる。「一緒に調べてみよう」と共に学ぶ時間をつくる。「失敗してもいいよ」と安心感を伝える。親が完璧でなくてもいい。一緒に育つ姿勢が、子どもに安心感を与えます。
情報モラルは、親子の対話から育つ
情報モラル教育は、特別な教材や講座がなくても、家庭の中で育てることができます。大切なのは、「ネットは便利だけど、気をつけることもあるよね」と、親子で一緒に考えること。
今日からできることは、ほんの小さな一歩です。「最近、どんなアプリ使ってる?」と聞いてみる。「困ったことがあったら、どうする?」と話してみる。「うちのルール、見直してみようか」と提案してみる。
その一言が、親子の新しい対話を生み、家庭の中に“さんさん”と“ごご”の学びのリズムを育てていくのです。
